貴重な小春日和の一日、台東ぶらり散歩の続きを行った。
人気大衆作家の池波正太郎は、関東大震災が発生した年、大正12年1月25日に浅草の待乳山聖天の近くで誕生し、一時埼玉県浦和市に疎開の後、小年・青年期を台東区内で暮らした。
生涯に1,000件を超える作品を残し、今回はその中でも代表作とされる『鬼平犯科帳』(以下鬼平と略す)、『剣客商売』(同剣客)、『仕掛人・藤枝梅安』(同梅安)、『雲霧仁左衛門』(同雲霧)および『幕末遊撃隊』(同遊撃)の5作品に描かれた場所を巡る。
訪問箇所が台東区全域にわたるので、東西に分けて2回で訪問する。
本日も、断捨離作業は午前中で切り上げて、正午に都営浅草線・浅草駅改札を出て地上に上がり、駒形橋の西側に出た。雲一つない快晴で、風もそよそよと絶好のコンディション。まずは駒形橋西詰交差点わきにある浅草寺ゆかりの地・駒形堂に参拝。本日の道中無事をお願いした。『剣客』にしばしば登場する小料理屋『酒飯・元長』はお堂の裏手にあり、調理人・長次と女将・おもとを結び付けた縁で、秋山小兵衛が度々訪れている。現在は、人気店『浅草 むぎとろ』が営業中で、店外の待合席には10人近くが待機中。
江戸通りを横断して浅草通りを西進する。日当たりがよい北側歩道を選択した。
国際通りに突当り右折、一本目の小路を左折する。すぐに『西光寺』があるはずだったが、『等光寺』 と 『清光寺』が並立している。西光寺は池波正太郎が平成2年に急逝したのち祀られた菩提寺。
なお、清光寺の立派な本堂の真横に「長谷川一夫の碑」があった。
小路を西進し左折、西浅草交差点で浅草通りを渡った。地下には東京メトロ銀座線・田原町駅構内が広がる。
2本目を右折し、龍宝寺・鯉寺に参拝する。本堂に向かって左手には、「登鯉観音碑」があった。『鬼平』には、同心・木村忠吾が盗賊の娘・お雪と逢引きを重ねた『しるこ屋・松月庵』が寺の門前にあったとされている。
新堀通りに出て右折北上する。左手の『阿部川町(現元浅草4丁目)』には、『鬼平』では盗賊・泥鰌の和助が、『雲霧』では座頭・富の市が居を構えたという設定。また、川柳発祥の地としても知られる。
前回同様に菊屋橋交差点から合羽橋道具街に入る。すぐ左手に『雲霧』が最後に狙った『菓子舗・越後屋』があった場所とされている。
平日とあって前回とは比べ物にならない少ない人出で歩きやすい。
2本先の小路を左折すると、YSC散歩でもたびたび昼食場所に使った松葉公園につく。まだ昼休み中なので、ご近所に勤める男女の方々で込み合っていた。隣接する松葉小学校の少し先に、『遊撃』の主人公・伊庭八郎家の菩提寺『貞源寺』があったが、現在は中野区・沼袋に移転しているので省略し、合羽橋道具街に戻った。飯田屋(株式会社 飯田)も落ち着いていた。外人客も時折見かける程度だった。
当地区に寺社が集中しているのは、明暦の大火(1657.振袖火事とも)で、30数か寺が移転してきたことによる。
道具街の店が途切れた右手に、真新しい大きな建物が出現、本日の目玉でもある『台東区生涯学習センター・池波正太郎記念文庫』。村谷も初めての訪問になる。平成13年9月26日な開設された(入場無料)。1階フロアには中央図書館が併設されているものの、たっぷりとしたスペースには池波作品に関する様々な資料が収蔵されている。本日は残された訪問箇所もあり、今後のYSC散歩での訪問を予定しているためざっと見ただけ。中でも目に付いたのは小学校6年間の通信簿で、体育等の一部を除きすべて「甲」ばかりだった。今年は生誕100年に当たるため、年間を通じて各種の記念事業が企画実行中。
言問通りに出て右折、国際通りを左折して千束五差路交差点を斜め左手に入り、仲之町通りに進む。
浅草名所七福神巡りで訪れた吉原弁財天と吉原神社に参拝。ここまでの道中無事のお礼と、残りの安寧を祈った。
千束4丁目交差点付近が、『遊撃』の主人公の一人で心形刀流 ・ 伊庭道場の跡継ぎである伊庭八郎が、遊女・小稲がいる『新吉原・稲本楼』があった場所。
残る2か所を訪れるには南側に左折する方が近いが、環境を考慮してそのまま直進する。次の吉原交番交差点の左右には。ネオンが輝くお店が各1件ずつで、お客さんが入っていった。
「見返り柳」がある吉原大門交差点で、土手通りに突当り南側歩道を左折する。向かい側にある天ぷら店「土手の伊勢屋」では、午後1時を過ぎているのに20人近くが店外に立っていた。幸い日当たりは良いものの、相変わらずの人気だった。
三ノ輪2丁目交差点で明治通りに合流、続く大関横丁で昭和通りに右折し、三ノ輪交差点にゴールイン。この付近に『梅安』の中で藤枝梅安の相棒・小杉十五郎の家や、『鬼平』の盟友・岸井左馬之助が 小野田治平の娘・お静と新居を構えた場所。
時刻は午後1時20分、本日は100分の行程だった。
例によってバスで浅草に移動、隅田川テラスは前回とは異なり、ゆっくりと場所を確保できた。
スカイツリーを見上げながら、ハチミツカリントウをつまみに缶チューハイ。句想を練って、何とか一句、アイディアが浮かんだ。
次回は、後半を歩く予定。(村谷 記)
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★2023年12月14日(木)『台東ぶらり散歩・第3回「池波正太郎作品ゆかりの地を訪れる(前半)」』