村谷は雨降らずの予報を見て旧都電14系統・杉並線の路線巡りを行った。当時は、高円寺1丁目までが「高円寺線」、その先荻窪駅前までが「荻窪線」だった。
この14系統は二つの特徴がある。一つ目は、西武鉄道が保有していた西武軌道線を東京都が買収したため、線路幅が1067mmと、他の路線とは異なることである。二つ目はほぼ100%近く青梅街道の上を走っていたため、昭和37年3月31日に全通した営団荻窪線(現東京メトロ丸の内線)と競合し、翌38年に早々と廃止された。
正午ちょうどに新宿駅東口広場から出発する。駅前は久しぶりに見る大混雑ぶりで歩道を渡る人たちが体を触れ合いながら行き来している。頭上のクロス新宿ビジョンでは、巨大な三毛猫がポーズをとっていて、スマホを向ける人たちも多い。
村谷は、旧青梅街道の標識を左手に見ながら、信号は渡らず線路に沿って坂道を下る。大ガード下へ左折して青梅街道の旅が始まる。旧青梅街道は、新宿追分(新宿四丁目付近)から甲州酒折中山道追分(甲府市酒折)までの137kmの長丁場で、途中ではあの大菩薩峠越えもある。村谷は以前、吉田兄らとtもに奥多摩駅まで歩いたが、その先はほぼ登山道なので行っていない。
新宿副都心のビルの間を進む。靖国通りとの分岐のすぐ先にある常圓寺境内のソメイヨシノがまさに見ごろだった。
新宿警察署前を通過する。歩道の反対側からは新宿駅方面に向かう人たちが切れ目なく進んでくる。
西新宿五丁目に差し掛かる。あちらこちらが年度末の追い込み工事中で、道路の反対側にあるはずの台湾料理の老舗「山珍居」(1947年創業)の店舗が探せなかった。昭和最後の時期に、この店で会社の仲間と盛り上がっていたら、常連だった赤塚不二夫氏がふらりと入ってきて、われらと同行のお嬢さんたちが声をかけられたことを懐かしく思い出す。
右手に赤い鳥居が見えて、成子天神社の入り口だ。遥拝して緩やかな坂道を下っていく。
淀橋交差点で職安通りとの分岐に着く。神田川の桜もまさに見ごろで、水面に向かってピンクに染まった枝が垂れ下がっていた。ここから中野区に入り上り道が始まる。
中野坂上交差点で本日最初の信号待ち。第一回目のチョコナッツを口に含む。ようやく人出が少なくなる。
右手奥に宝仙寺が鎮座ましていたので参拝に向かう。広々した境内には法事に訪れたらしい車が数台停車していただけで無人だった。現役のころには葬儀でしか訪れたことがなかったので、ゆっくりとお参りした。
中野警察署前でハンバーガーを頬張りながら歩いてくる茶髪の若い女性とすれ違う。短い上着の隙間からおへそが覗いている。
鍋屋横丁交差点を横断する。ずっと以前から名前も場所も知ってはいるものの、まだ訪れたことがない空白地帯。
新中野駅先の交差点で、中野通りを渡る。歩道の反対側に杉山公園が見えるが通過。
本日初めてようやく日差しが差し込んできたものの、わずか数分で引っ込んでしまった。予報は はずれらしい。
新高円寺駅そばで再び、おへそが見える衣装の若い女性とすれ違う。黒髪でスマホを操作しながら下を向いて歩く。
反対側の歩道わきににYSC散歩でもしばしば訪れた蚕糸の森公園が見えるが、ここも通過。
高円寺陸橋の下を潜り抜ける。都立家政駅近くにあった独身寮に住んでいた昭和の時代には、新宿で遅くなるとここで環七に右折し、丸山陸橋で新青梅街道へ左折して帰ることもしばしばあった。
環七を左手に下ると、江戸期から信仰を集めた妙法寺がある。本日のスタートの時点では、鍋屋横丁から斜め南側に下る妙法寺参詣道(堀之内道)を行く予定だったが、思ったより上空の雲が厚かったため天候急変に備えて断念した。
五日市街道入り口交差点で、三回目の信号待ち。こちらもかつて、この分岐点から吉田兄らと武蔵五日市駅まで歩いたことを思い出す。
新高円寺駅前に着く。右手にブックオフがあったので休憩を兼ねて入店、数分間過ごしてから出発。
道筋が右手斜め方向に緩やかに進む。
すずらん通り入り口前を通過、右手奥はもうJR中央本線・阿佐ヶ谷駅、荻窪駅までは一駅だ。
南阿佐ヶ谷駅先で、右手に1.6kmの間に270本ものケヤキ並木が続く中杉通り。すっきりと聳え立つ並木が奥までずっと見わたせる。
天沼陸橋でJR線を越えて、荻窪駅前に到着したのは、午後1時40分、本日はちょうど100分間の行程だった。
駅近くにいくつもある有名ラーメン店にはまだ行列ができていて、休日の昼下がりらしい雰囲気が漂っていた。
荻窪駅周辺には腰を下ろして休憩でしそうな場所がないので帰途に着く。
東京メトロ丸の内線に乗車した。新宿駅までの所要時間は10分、徒歩の10分の1だった。
次回は15系統(高田馬場駅〜茅場町)の予定。(村谷 記)
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★2022年3月27日(日)『旧都電路線巡り「14系統(新宿駅前〜荻窪駅前)」』